2016年2月29日月曜日

思い出のラーメン屋

閏年の2月の最終日である。

真面目な話が続いていたので、今日はエッセイ。
私は、元々エッセイが好きである。
どうでもいいような日常の些細な出来事について、あれこれ解釈して書いてある文章が好きだ。
さくらももことか原田宗典とか、リリー・フランキーとかの文章も大好きである。

というわけで、たまにはエッセイ。
思い出のラーメン屋の話。
大分昔の話である。
(本当にどうでもいい話なので、お忙しい方は読まれずにいただきたい。)

あれは2月の寒い日の昼だった。
寒くて遠出するのが嫌で、アパートの近くの一度も行ったことのないラーメン屋に入った。
いわゆる普通の店構え。ザ・ラーメン屋。
赤い暖簾に白字で「ラーメン」と書いてある、あれである。
普通感が強すぎて、一度も行ったことがなかったので、敢えてのチャレンジである。

中に入ると、客が私の他にも数人いた。
カウンター越しに店のオヤジに「タンタン麺」を頼んだ。
寒いので、体の温まる辛い物が食べたかったのである。
(実際は汗をかいて体が冷えるとか色々な説があるが、ここでは割愛。)

待つこと数分、オヤジがどんぶりを持ってきた。
「ヘイ、タンタン麺お待ち!」
目の間に置かれたのは、澄んだスープに、肉野菜炒めがのっているラーメン。
「これは・・・」
どう見ても、タンメン(湯麺)である。
読んで字の如く、湯麺である。

私は戸惑った。
私は、間違いなく「タンタン麺(担々麺)」を頼んだ。
オヤジも、間違いなく「タンタン麺お待ち!」と言った。
つまり、この店では、これが「タンタン麺」なのである。

「観」がどうこうの問題ではない。
これは、明らかに「タン麺」である。
しかし、この店の支配者であるオヤジが「タンタン麺」だという。
赤いはずのスープが、白(むしろ無色透明)なのである。
まさに「黒いカラスを白」の世界である。

初来店で完全アウェーの私は、腹を括って、その「タンタン麺」と命名された「タン麺」をすすった。

・・・薄い。
とにかく、味が薄いのである。
お湯に少し塩が入っている感じ。
絶妙なマズさ。
私は、あまりマズいとかは言わないで食べる質だが、これは不味い。
食べきることもできず、かといって今更文句をつけることもできず、早々にお金を支払って店を出た。

いうなれば、惨敗。
正しいことを言えなかった悔しさと後悔の念が押し寄せる。
寒風に吹きさらされながら、家路についた。

思い出深いラーメン屋である。
正義は、勝つとは限らない。
いや、正義とは、その場の支配者によるものなのである。
そんなことを、あのラーメン屋のオヤジが教えてくれたのかもしれない。

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