今号も指導の「スルーorリアクション」について。
読者の方からのお悩みにお答えという企画である。
一応動画も作ってみたが、書いた方が詳しく説明できる気がするので書く。
(これはこれで、ニーズが別々にあるような気がする。)
お悩み内容は「高学年になると歌わなくなる」である。
さらに「歌わないと周囲の先生からサボっていると見なされる」という他者目線の悩みでもある。
まずは、このブログの過去記事が参考になると思い、紹介する。
参考:教師の寺子屋(2013.1.16)「歌えるようにするには」
https://hide-m-hyde.blogspot.com/2013/01/blog-post_16.html
対応については、この記事とほぼ同じことだが、一応動画でもお答えした。
「高学年」というポイントだけでもいくつあるのだが、今回は普遍的で基本的な対応に絞る。
まず、スルーとリアクションという視点で書く。
スルーすべきは
「あまり意欲的でない層」
である。
逆に、優先的にリアクションすべきは
「非常に意欲的な層」
である。
2:6:2の法則というのを聞いたことがある人もいると思う。
「働きアリの法則」などともいう。
元々はパレートの法則(80:20の法則)から出たものと思われる。
パレートの法則とは、2割の事業が全体の利益の内の8割を生んでいるという経済の法則である。
(逆にいえば、残り8割の事業は全体の2割分の利益しか生んでいないということになる。
単純計算すると、生産性としては、わずか2割の事業は残り8割の事業の16倍である。)
さて、働きアリではないが、学級を見る時には、この2:6:2が何かと出てくる。
あらゆる場面において、2割はすこぶる意欲的だが、2割はやる気が全くない。
そして一番多い6割は「浮動票」である。
学級経営の基本として「真面目を優先する」を掲げているが、これである。
意欲的な2割に最優先して着目する。
どうしても一番多い6割を優先したくなるが、ぐっと抑える。
どうしても一番気にかかる意欲のない2割に目がいってしまうが、ここもぐっと抑える。
意欲的な2割を優先する。
もっというと、その中の「トップランナー」にこそ着目する。
なぜか。
意欲のある2割に着目すると、その2割は更に意欲的になり、ハイパフォーマンスを発揮する。
そうなると、6割はその意欲的な2割の層に引っ張られる。
自分もそちらに行きたいからである。
ちなみに、決してパフォーマンス自体は高くなくても、強い意欲が見られる子どもは優先的に見てあげる対象である。
そうなると、「2:6」だったのが「3:5」になり「4:4(=1:1)」になっていく。
「一生懸命やっている人が評価し注目される」のだから当然である。
さらに、最初の「2」の群の中からは更にハイパフォーマーが出るので、更に全体のパフォーマンスは上昇する。
ところで最初の「意欲的でない2割」はどうなるのか。
実は、全体が上がるのにしたがって、ここの意欲もパフォーマンスも上げられる。
全体が上昇しているので「そんなしてないで一緒にやろうよ」「教えてあげるよ」というメンバーが増える。
結果的に、指導者が実は一番気にしていた意欲的でない2割も、そこですくえることになる。
(ちなみに、例外的に全くのってこない1割弱もいるにはいるが、それは個人の意思の尊重で、それもまたよしとする。)
学級の朝の歌などは、この傾向が顕著に出る。
歌わないメンバーだらけの中で放っておくと、意欲的なハイパフォーマーすらも歌わなくなる。
指導者は何よりも優先的にハイパフォーマーに着目し、まずここだけでも引き上げる。
みんな根本は「良い方が良い」と思っているので、素直な層が追従してくれる。
これは決して不当な差別でも贔屓でもない。
「こうしよう」という提案に対し、それを素直に一生懸命に実行するものが高く評価される。
当然のことである。
逆の姿が見られる子どもを高く評価したら、それこそが不当な差別で贔屓である。
(ちなみに学習障害や自閉症スペクトラムなどの特別な支援が必要な子どもへの対応、という話とは全く別の話である。
これはまた個別に専門的な知識による対応が必要である。)
真面目な人を損させない。優先する。
歌の指導に限らず、あらゆる面で適用できる学級経営の基本である。
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