木更津技法研での野口芳宏先生からの学び。
以前も似たことについて書いたことがあるが、読者の皆様のためになりそうなので書く。
「書誌学」という学問がある。
ウィキペディアによれば、
「書籍を対象とし、その形態・材料・用途・内容・成立の変遷等の事柄を科学的・実証的に研究する学問のこと」
とある。
例えば、ある詩人の作品を授業するとする。
その時、作品そのものだけでなく、作者である詩人の人生を徹底的に調べる。
すると、詩の背景にあるものが見えることがある。
これはこれで大変意味のあることである。
具体例として、次の短歌を見てみる。
くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨のふる
正岡子規の作品である。
これを「病床につき、寝たきりのまま庭を見てつくった」という背景を知ることで、見え方が変わる。
より深く味わえるともいえる。
ただ、これは作品を純粋に鑑賞している姿勢とは異なる。
「病床についた稀代の俳人正岡子規の作品」として見ていることになる。
これが、例えば私が作った短歌だとしたら、大分解釈が変わることになる。
つまり、授業において、作品は「作者の手から独立した存在」として認めるべき、という考えである。
子どもは作者がどんな人生を送ったかをいちいち調べて読む訳ではない。
だから、その作品そのものと向き合って鑑賞する態度が大切だということである。
国語を研究しつづけてきた大家の先生の言葉だからこそ、説得力がある。
余談だが、俳句で句会をする時には、作者が誰だかわからない。
誰が作ったかではなく、作品そのものを選ぶ。
作者は抜きにして、優れた作品が選ばれる。
だから、作品そのものを真剣に見ることになる。
書誌学に疎いことを気にして「私には良い授業ができない」などと言わず、
まずは目の前の作品を自分自身が全力で味わうことが大切である。
2014年10月16日木曜日
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