2020年11月19日木曜日

ペルソナは集団で決まる

教育に関連する心理学の話。


個人の性格は、集団の人間関係で決まる。

だから、この人はこういう性格、とは言えない。


正確には「○○と一緒にいる時はこういう性格」である。


当り前だが、子どもが家庭にいる時と学校にいる時は、別人である。

例えば家庭だとぐずぐずでわがまま放題だが、学校だと品行方正、やる気と思いやりに溢れているという子ども。

これは、子どもが嘘をついているのではない。

その場にあった仮面(ペルソナ)を付け替えているだけ、という考え方である。


ちなみに、ペルソナというのは有名な心理学者のユングが提唱した用語である。

この「persona」は「個人」を意味する「person」の語源でもある。

他者の前に現れる個人というのは、一つの仮面なのである。


これは大人でも同じで、社会に出ている自分と家庭にいる自分が同一だと、色々と困る。

友人の前の自分と上司の前の自分が同一だと、やはりこれも困る。

必要な場面に応じてペルソナを付け替えるというのが大切なのである。

ペルソナは偽りの自分ではなく、他者の前で必要な自分であり、それも本当の自分の姿の一つである。


余談だが、ここには「シャドウ」という概念もセットである。

他人の前に一切出さない自分である。

普段人前では抑え込んでいる自分である。


シャドウも紛れもなく自分であり、しかしながら自分としてはあまり良くないと思える個人である。

シャドウの自分は、ペルソナの自分と正反対の性質を備えていることが多い。

シャドウの自分を認めてあげないと、苦しむことになる。


社会で真面目で通っている人は、実は不真面目にしたい自分をもっているというのが健全なのである。

社会でシャドウの面を出すと受け容れてもらえない可能性が高いと思っている。(信念として思い込んでいる。)

よってこれは無暗に出さずに、しかし自分の中では否定せず認めるという姿勢が大切である。


学校だと素晴らしいのに家だと正反対で残念になる子どもというのは、家庭でシャドウの面を出せているという解釈もとれる。

それは家庭的には残念かもしれないが、社会で活躍する分にはいいのである。

家庭の本来の役目である「補充と安全・安心」という基地の役割をしっかり果たしているともいえる。

やがて成長するにしたがって、家族に対してもシャドウを出し過ぎるのは良くないと思うようになり、調整するようになる。


ちなみに、イラっとする相手というのは、自分のシャドウの面をペルソナとして用いている人である。

だらしない人にイラっとする人は、本当はだらしなくしたい自分がシャドウにいる。

自分の子どもに対してイラっとしてしまうのは、自分のシャドウを素直に出してくるからかもしれない。


話を戻す。


そう考えると、その子どもがどういう子どもであるかは、集団そのものに左右される。

望ましい個人(ペルソナ)を出しやすい集団の雰囲気を作る必要がある。


悪ぶった方が優位に立てそうな集団だと、賢い子どもほどそれに合ったペルソナを付けてくる。

逆に、真面目な方が良いことが起きそうな集団だと、それに合ったペルソナを付けてくる。


つまり学級担任は、集団にとって望ましいペルソナが出やすい環境を整えることが大切である。

真面目や他者の尊重が優遇される風土か、批判や揶揄、ふざけやいい加減が幅を利かせる風土か。

従順で黙っていることがほめられる風土か、自由闊達な意見が尊重される風土か。


授業でいうと、不真面目にやっていた方が構われたり心配されるのか。

真面目にやっていた方が構われたり賞賛されたりするのか。

これによって、子どもは必要な(最適解と思われる)ペルソナを付け替えてくる。


話を聞けば簡単にできることにも「わからなーい」「もう一回言ってー」が出た時に対応する授業なのか。

多少難しいことに対しても「挑戦すべし」「諦めずに取り組むこと」と鍛える授業なのか。

子どもが自分でできることも教師がやってあげるのか。

できることはもちろん、困難なことにも簡単には手を貸さない教師なのか。

ここの対応の違いで、子どもの用いるペルソナは180度変わってくる。


集団の在り方で子どもの性格は決まる。

どういう集団にするかは、実は担任がかなりの裁量権を持っている。


時々「子どもの元々の性質がダメ」という理由で、学級を否定する意見を耳にすることがあるが、これは全くの誤りである。

ストレートに言うと酷なようだが、ダメ集団にしたのは、直接的には、学校と教師である。


望ましい集団づくりこそが、担任の仕事である。

子どもの性格どうこうを言う前に、集団としての在り方を見直すことが大切である。

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