次の本を紹介する。
「マルトリートメント」とは、直訳すると「悪い扱い」。
避けるべき子育て、不適切な養育などと訳される。
虐待とまではいかなくとも、それに類するものまでが包括された言葉である。
そこに「教室」という言葉がついており、これは著者の川上先生の造語である。
教室での「行き過ぎた指導」から、
「これまで当たり前にされてきたがあらためて考えると子どもの心を傷つける要素をもつ指導」
までを指す。
いわゆる「問題のある教師」向けの本ではない。
「自分はぼちぼち普通にやれている」という人から「自分は熱意がある方だ」と思う人まで、すべての教師向けの本である。
教室で当たり前にされてきた異常に気付くための本である。
読めば身につまされること必至である。
この本のオンラインイベントで赤坂真二先生との対談があり、そこで
「この本から逃れられる教師はいない」
というようなことを述べられていたが、その通りである。
無自覚に行っていたあらゆる不適切な行為に対し、向き合うべき課題と対策・方法が明確に示されている。
教師は「熱心な無理解者(児童精神科医の佐々木正美氏の造語)」にだけはなってはならないという。
何に熱心なのかというと、「直す・変える・正す」という行為である。
他人の不得意を「直す・変える・正す」など、その分野のプロ中のプロでも難しい。
教師が子どもの不得意分野においてここを熱心に目指せば、何が起きるか。
子どもの心理的な悪化が目に見えている。
場合によっては、身体的な虐待にもつながりうる。
「熱心」であればあるほど、その被害は果てしなく大きい。
以下は私見。
この本を読むと、教師という仕事がいかにストレスフルなのかが自覚できる。
あらゆる方向からのプレッシャーにさらされ続ける。
「きちんとやれ」「上手くやれ」「愛情をもて」「ミスはするな」
これらすべてを「きちんと」やっていたら、壊れる。
無理を求められていることに気付くのが先決である。
今の教育現場は、そもそもがいわゆる「無理ゲー」状態なのである。
ゲームから降りないとしたら、クリアを目的としない方向の選択をする必要がある。
我々の「熱心さ」は、死なないための必死さから来ているのかもしれないと気付く必要がある。
この本は、そんな教師への救いの書である。
この本を読むと、まず自分がダメな気がする。
しかしよくよく読み進めると。自分だけではなく、全員で間違えていることがわかる。
どんなことでも、間違えに気付くことは問題解決の大きな一歩である。
学校教育に携わるすべての人に本書を強くおすすめする。
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