2021年11月13日土曜日

学級経営研究における相関と要因

学級経営と学術論文について。


先日、日本学級経営学会における、学級経営の論文の書き方について学習会があった。

学級経営に関する現場からの論文というのは、国語や算数などの教科に比べて、あまり多くない。

もっとはっきり言うと、かなり少ない。

今後、増やしていくことが大切である。


しかしなかなか増えない。

それは、この手の論文を書くことの様々な壁、困難に起因する。


教育系の研究論文を書く際の難しさの一つに、要因の特定のしづらさが挙げられる。

様々な要素が絡み合う中で、どれがその結果を引き起こす「要因」足り得るのかである。

要は、小学校の理科の実験で学習する条件制御。

あれがうまくできないという点である。


例えば理科でX「日光」がY「植物の成長」にどのように影響を与えるか調べたい。

その際、理想的なのは要因と思われるX「日光」だけを変えるもの(独立変数という)とし、他の条件は全て同じにすることである。

種子は同じものからとれた同じ大きさのものが望ましい。

使う土や気温などの条件も揃える。

ここまでして、Xに対するY「植物の成長」という結果(Yを従属変数という)を調べることができる。


厳密に言えば他にも色々な見えない要素が混ざっているので、実験がうまくいかないことが起き得る。

ただ、小学校の理科の実験では、この程度の条件制御にとどめている。

うまくいかない例が2,3出ても、統計的に処理すればそれは問題ないということになる。

だから、一つの事例ではなく、なるべく類似する複数の事例(データの多さ)が大切になる。


相関があるならば、X次第でYが決まるということになる。(XとYは相関がある。これには正と負がある。)

相関がないならば、Xの変化にYは影響されない。(XとYは無相関)

要は小中学校で習う関数の考え方である。


学校教育の実践に関する研究では、ここが難しい。

例えば、1年間、X「クラス会議をした」とする。

(この際、対照群として「クラス会議をしていない」学級が必要である。)

その時に、X「クラス会議をした」に、それをしていない対照群の学級に比べて、

Y「学級満足度」が年度始めに比べて年度末は上がったとする。


まずここに「相関がある」と言えるかどうかという段階で、既に統計的処理が必要になる。

次に、もし統計の結果「相関がある」と言えたところで、「クラス会議」がその変化の要因であるとは特定できない。


なぜならば、1年間の間に、Y「学級満足度」に影響を与える様々なことが他に起きているからである。

先の植物の成長条件の実験時のように制御できればいいのだが、そういう訳にはいかない部分が多すぎる。

A「人間関係」の変化が起きる。

B「子どもの発達」がある。

C「担任の指導法」がある。

D、E、F・・・無数にある。


Y「学級満足度」のような大きなものに与えそうな要因は、挙げればきりがない。

複雑すぎて、どの要因がその効果を導き出したのか、はっきりとわからないのである。

特に子どもの場合、発達が個人に与える影響は大きく、無視することができない。


これは客観性の担保の難しさとも関連する。

各学校の各学級、教師も違えば、子ども一人一人も、子ども集団としても違う。

教室での教育実践は、どこまでいっても主観的にならざるを得ない。

そこをいかに客観的に分析できるようにしていくか、というのが研究である。

この手の研究が難しいことは、誰の目にも明らかである。


もっと言えば、現場が忙しすぎるという点。

これは研究の進まない大きな要因の一つという可能性があるように思う。

(検証していないので、これもあくまで仮説である。)


結局、教師の多忙解消といった実際的なところが、学術的に教育研究を発展させることにつながりそうである。

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