2018年5月23日水曜日

保護者と学級担任のリスペクト関係

保護者と担任が、互いをリスペクトすることについて。

ここに関しては、担任の側から先にはたらきかけることが大切である。
上っ面ではいけない。
心から思うことが大切。
それには、やはり知識が前提になる。
「自分が知らないことを相手は知っている」という、「無知の知」である。

担任が知らなくて、保護者が知っていること。
その最たるものは、子どもそのもののことである。

担任は、「学級」という集団単位での知識に関しては長けている。
しかし、「〇〇さん」という個人に関していえば、到底その親に及ぶはずがない。
接している時間が桁違いである。
また、これから接していく時間も、桁違いである。

担任は一年、ないし長くて二、三年のほんの一時期しか一緒にいられないが、保護者は一生の付き合いである。
覚悟が違う。
だから、教育の方針は、保護者優先である。
こちらの教育方針を示しつつも、個人に関しては、可能な限り家庭の側に寄せる。
(ここに関しては、拙著『切り返しの技術』にも詳しく書いた。)

最もわかりやすい例を挙げれば、宗教。
「豚肉を食べない」という宗教をもつ家庭の子どもに対し、豚肉の入った給食を食べさせる学校はない。
そこに合わせるのが当然である。
一方で、「だから豚肉は全校の給食に一切出さない」とはならない。
それは、全体の利益を損なう。
「豚肉を食べさせたい」という家庭の方針を排することにもなる。
だから、あくまで、個人への個別対応である。
アレルギー対応と同じである。
それが全体の方針を示しつつ、個人に寄せるということである。

あくまで、各家庭の教育方針を尊重する。
ここまでその子どもを育ててきたという事実に尊敬の念を抱く。
実際、自分で一人の子どもを育てるとなると、相当な困難が予想される。
そこに関してリスペクトの気持ちをもつということである。

大体、私は家に関する大部分をパートナーに任せて仕事に思い切り打ち込ませていただいている以上、家庭の子育てに関してあまりどうこういえない。
休日にいい顔して、子どもが寄ってきて、「いいとこどり」していると思われても、仕方がないと思っている。
母親としての生みの苦しみも一生知れないし、母親なりの本当の苦労、心労も、喜びもわからないと思う。

どの家庭にも、その家庭なりのストーリーがある。
苦労も喜びも、千差万別である。
つまり、それぞれの保護者は、確実に「私の知らない世界を知っている」のである。

子育てに関しての知識自体なら、インターネット上に溢れている。
だから、「こうすればこうなりますよ」と言うこと自体はできる。
しかし、所詮、一般論である。
10人中1人当てはまれば、当たっている方ではないかと思う。
(以前、「幼児にも割れる食器を使いましょう」という記事でも書いた。
「食事の度に毎度割られてたまるか」というのが我が家の本音である。)

今の時代は、玉石混淆、様々な情報が無料で手に入る。
親の側が学校教育に関する「知識」を得られる機会が無限にある。
教師の側にも、家庭教育に関する「知識」を得られる機会が無限にある。

そして巷に溢れる情報は
「こういう風に育てればこうなる。」
「こういう子どもになるのはこういう育て方だから」
というものが大半である。

それが成立しないことは、当事者にしかわからない。
「我が子が言うことをきかないのはしつけが悪いから」
「落ち着きがなく乱暴なのはしつけのせい」
ということになる。

そんなはずがない。
同じように育てていても、「種(たね)」が違うのだから、同じものが咲くはずがない。
向日葵の種を薔薇だと思って育ててもうまくいくはずがない。
同じ花からとれた二種類の種でも、同じように育つはずがない。
みんな、そここそが「個性的」なのである。

「個性を生かす」というが、「個性は生きる」というのが持論である。
同じような条件下で育てていても、違いが出てくるのが個性。
むしろどんなに潰そうとしても、潰れないのが個性。
ルールは一律・一定にしている上で、なお違う結果が出てくるというのが個性という実感である。
兄弟を育てれば、なおよく実感としてわかることである。

そんな「個性的」な子どもを、悲喜こもごも、保護者はここまで育ててきたのである。
宝物を、預けてくださるのである。
そこへの感謝なくして、学級担任の仕事は有り得ない。

学級には、色々な子どもたちがいる。
どの学級でも、担任は、大変な思いをするだろう。
しかしそれは、保護者も大変な思いをしているのである。

結論、保護者は、担任と苦労を共にする仲間である。
担任は保護者へのリスペクトの気持ちをもって事に当たりたい。

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