2019年12月14日土曜日

教育と習慣が「学力テスト」の点数へ与える影響は?

世を騒がせ続けている、全国学力学習状況調査の結果についての考察。
(タイトルは敢えて俗称の「学力テスト」とした。キャッチ―に伝わるからである。)

最近、必要に迫られて、統計学を学び始めている。
その中で「相関係数」というものが出てくる。

要は、二つの事柄の間に、関係性があるかないかというものを1からー1までの数値で表したものである。
(計算式や方法はややこしいので省略。)
目安として
0.7 ~ 1.0 かなり強い相関がある
0.4 ~ 0.7 相関がある
0.2 ~ 0.4 弱い相関がある
0  ~ 0.2 ほとんど相関がない
と読む。
ちなみに「+」だと正の相関、「-」だと、負の相関になる。

Wikipediaにある例によると、先進諸国の失業率と実質経済成長率は強い負の相関関係にあり、相関係数は-1に近くなるという。
(失業率が上がるほど、確実に経済成長率が落ちる傾向。一次関数でほぼ直線右下がりのグラフ。)

このようにして、次の文科省のページにある全国学力学習状況調査の結果を見てみる。
http://www.nier.go.jp/19chousakekkahoukoku/factsheet/19primary/

以下は、このページの最下部の方にある、相関係数の入ったエクセルデータである。

相関係数(児童質問紙-教科)全国【表】
http://www.nier.go.jp/19chousakekkahoukoku/factsheet/data/19p_421.xlsx

見るのが面倒な人もいると思うので、見ないでもわかるように結論から。

この結果を見ると、残念ながら、ほとんどすべての項目において、国語や算数の点数とは「相関がない」と読める。
相関が見られたのは、算数、国語が「わかる」と答えた子どもと、それぞれの教科の点数に「弱い相関がある」という程度である。
他は、生活習慣や学校での教え方、環境等のあらゆる「正しい」と思われる教育行為が、思った以上に点数と相関がないようである。

直接的に国語と算数の「学力テスト(通称)」対策の勉強をする、ということが最も効果があるのかもしれない。
事前対策テストの頻度でも聞いたら、おそらく強めの相関が出るのではないかと思う。
(これは、体力テストでも同様。実施回数を増やすほど、確実に数値が上がる。)
学校調査の方なら「事前テストをするように学校へ何らかの圧力がありましたか」ときけば、きっと相関が出るだろう。

相関係数という視点から見ると、単純な点数と、生活習慣や教育方法との相関はなさそうである。
残念無念である。

ただし、この相関係数で見る時に要注意なのが、

「相関関係がある」≠「因果関係がある」
あるいは
「相関関係がない」≠「因果関係がない」

ということである。
因果関係とは、どうやら別物のようなのである。

例えば、以前にこのメルマガ上で、「東大生の小学生時の習い事No.1は、水泳」ということを紹介した。
(参考記事↓まぐまぐニュース「東大生の6割が小学生のとき水泳教室に通っていた。だから何だ」)
https://www.mag2.com/p/news/242251 

この結果からは、東大生と水泳ということには、相関関係がありそうである。
しかしながら、それは「水泳に通っていたという要因から、東大生になった」ということには結びつかないということ。
例えば、東大生になった子どものいる環境には、周囲に水泳教室があることが多かった、という可能性も考えられる。
これが「相関関係があっても、因果関係があるとは言い切れない」という一例である。

この手の要因は他にも多様に考えられる。
要因の特定は、難しいのである。

先の例でいうと、「事前テスト」と「点数」に強い相関が出ると予想した。
しかし、実際にとってみたとしても、相関係数に高い数値が出ない可能性もある。

なぜか。

確かに、事前テストを多くしたから点数が高かったという子どもが、多く存在するはずである。
一年間、毎日のようにテスト対策練習をした学校の点数は当然上がるだろうということは容易に予想される。

一方で、そんなことを一度も全くしなかったのに、点数が高かったという子どもも存在する。
元々塾通いが多く、テスト系学力の高い子どもが集まる地域の学校(所得とかなり強い相関がある)や、
入学困難な私立中学を受験する子どもが多い学校である。
あるいは、それと全く関係なく、すごく勉強にセンスのある子どもである。(いわゆる天才タイプ。)

この両者は、相殺関係にある。
「事前テストをした」「事前テストをしていない」という真逆の方法に関わらず、同一の結果(点数)を示すからである。
テストの点数が上がる要因が、「単純なテスト慣れ」と「本来の学力の高さ」の両方に関わるからである。
だから、相関係数をとると、予想に反する小さな値になることがある。

じゃあ、相関係数をとっても意味がないじゃないかというと、そうでもない。
そういう考察をする余地ができる訳である。
少なくとも、相関がないということは、それさえやっていれば他方がOKということにはならないという事実が示せる。
(例:「早寝早起き朝ごはん」だけでは、点数が上がらないということ。
当たり前だが、点数を高めるには、学習が必要である。)
強い相関があるということは、何かしらの関係性があるということが示唆される。

まあいずれにしろ、あらゆる教育行為と現在の学力テストの点数に相関関係がないということは、何かと考えるべき事実である。

折角文科省が50億円もの予算を投じて全国から集めたデータ。
わざわざ一般公開してくれているのだから、何かしら、現場に役立てたいと思う次第である。

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