2020年9月20日日曜日

仕事に誇りをもつには

 今回は、具体ではなく、とても哲学的な話。

仕事術ではなく、教育観に寄った話である。


仕事に誇りをもつというと、大上段に構えているという人もいるし、そんな大した仕事をしていないと謙遜する人もいる。

確かに、こういう高尚な感じのする言葉には、そういう嫌味な面が見えることもあるのかもしれない。

しかし、特に現代の教職に就く人には、それぐらいの意識がある方が働きやすいのではないかと考えている。


日本において「小学校教師」ときいて、社会一般はどのように反応するだろうか。

あるいは、現役の小学校教師たちは、どのように認識している、あるいは、認識されていると感じているだろうか。


残念ながら、あまり良い印象をきかない。

今まで働いてきた身近なところできいてきても、

「この仕事は好きだけど、社会に認められているとは感じられない」という人が多い。


試しに、Googleで「小学校 教師」と入力してみる。

そうすると、このワードに続いて、予測ワードが出てくる。

上から順に

「給料」「おかしい」「資格」「苦情」「大変」「大学」「服装」

ときた。

何だか、残念な気持ちになるワードがいくつか並ぶ。


この社会的な認識のもとで、誇りをもてというのは、なかなかに難しい。

そうなると「どうせ」「自分なんて」と思いやすい。


ただ、もしもそんな認識の大人に教わる子どもたちは、どう感じるのか。

どんな職業観や倫理観をもつ人間に育つのか。

あまり良い影響を与えられなそうである。


やはり、人に教える職業である以上、仕事には誇りをもちたいところである。

子どもにとって最も間近で仕事の姿を示す大人である以上、生き生きとしている方がいいに決まっている。

だから、教師は周囲の認識より高めの意識をもつぐらいで、ちょうどバランスがいいのではないかと考えている。


特にまだ新卒などの若い人なら、鬱陶しがられるぐらい元気だったり、たとえ静かでも熱心すぎるぐらいだったりする方がよい。

がんばろう、挑戦しようという心がなくなり、楽を求め始めると、やがて枯れて、腐っていく。


諦めて気持ちが枯れてしまうぐらいなら、頑張って挫折した方がずっといい。

折れても直せるが、枯れたものは、再生が難しい。

また折れた状態からしっかりと立ち直れた場合、以前より格段に強くなる。

一方、生活の保障がある程度約束されている分、枯れる方にゆっくりと転げ落ちていくのは容易である。


だから、仕事への誇りなのである。

誇りをもっていれば、自分の仕事をないがしろにはできなくなる。


仕事に誇りをもてると、それに従事している自分にも誇りをもてるようになる。

目の前の子どもに、どういう価値のある人間として立つのか。

自分が教えることで、他にないどういう価値を提供できるのか。

そこに、教科書通り、マニュアル通りでないオリジナリティが出てくる。


仕事への誇りは、心の支えになる。


いくつになっても、挑戦している人は若々しい。

私がかつて見てきた、尊敬したくなる現場の先生方は、50代以降にしてなお輝きを増す魅力溢れる方々だった。

枯れる兆しもなく、気持ちが張っている先生方である。

何なら、80代なのに、20代よりも精神的にずっと若々しい人もたくさんいる。

(肉体はさすがに別らしい。腰とか膝とか目とか耳とかにくるようである・・・。)


ご本人たちは意識していないのかもしれないが、そういう人たちと話すと、やはり仕事に誇りをもち、それが好きなようである。

「もうこんな年だけれども」とよく言う。

「けれども」なのである。

「だからどうせ」「でも」「だって」の対極である。

「けれども」からは、表面には見えない奥底から沸々と湧き上がってきそうなエネルギーを感じる。


どうすれば仕事への誇りをもてるのか。


まずは自分が今目の前でやっていることに、少しでも自信がもてることである。

それには、自分のやっていることが、誰かの幸福に貢献できていると感じられること、自覚していることである。

これは、仕事の本質であり、全ての職業に共通してい言えることである。


ちなみに外的要因でいうと、「管理職」「同僚」「保護者」のいずれかが「敵」に見えると、かなり萎える。

特に同僚の励ましや承認がないのは厳しい。

もし職場の若手が元気がない、大人しすぎるとしたら、同僚である自分がやるべきことをやっているか振り返る必要がある。

「安全・安心」の信頼ベースがないと、たとえ高い志があっても、人間は挑戦できないからである。


何となく暗い日本の現状を打破して、明るい未来をつくっていくのは、教育の力である。

そのための重要な任務を背負っているという自覚と誇りをもって、仕事をしていきたい。

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