2020年5月19日火曜日

学校の役割を見つめ直す

この長期休校期間における教育の問題点は、大まかに言って二つである。

1つ目は、人間関係の問題。
子ども同士の交流の場の問題である。
児童虐待問題もこれに含まれる。

2つ目は、学力保証の問題。
当たり前だが、学習指導要領は、教室に子どもが集まって実施することを想定している。
そもそもがオンラインでどうこうできる制度設計ではない。
直接の授業ができないことには、どうにもしようがないというのが現場の本音である。

さて、この両方を、通常の学校という存在は担保していたといえる。
しかしながら、実情は、その専有面積がかなり異なるのである。

人間関係については、かなりの部分を学校が保証している。
子どもにとって人間関係が築けるのは、学校である。
塾や習い事といったことにも人間関係が絡むものがあるが、毎日8時間近くを過ごす学校ほどではない。
学校は、社会における人間関係について学ぶことが、その中心に来ているといえる。

さらに日中に学校の時間がたっぷりあるから、家庭の側にも「空き」の時間ができる。
大人が社会に安心して働きに出られるということとも、大きく関連がある。

一方で、学力保証について、学校の占める割合はどの程度であろうか。
9割、といいたいところだが、実際はそうなっていない。
確かに学校では様々なことを教えて学力をつけるが、そもそものベースとなっているのは家庭教育である。
さらに、その家庭教育における学力面に協力しているのが、習い事や塾、通信教材等の企業の力である。

私が今の学校に来て宿題をほとんど出さないようにしたのは、ここへの考え方が大きい。
家庭の教育力が高いため、多くの子どもが放課後の学習習慣を身に付けているのである。
普段一律の宿題を与えても、あまりプラスにならない(親子共に歓迎されない)状況が多いようなのである。

そもそも、学校では学校でつけられる学力を保証すべきである。
それは、話合いや交流を中心としたものであり、動画やテキストで学んで身に付けられる知識の類のものではない。

単に知識をつけるような学習は、必要ならば個人で勝手にいくらでもできるのである。
一律の宿題にすれば、どうしてもそれが不要な子どもに、不要な宿題を出すことになる。

ドリル等の習熟教材も、できれば学校の授業の中で実施してしまうのが妥当と考えている。
授業中に実施して、早い子どもは一瞬で全問正解、ゆっくりな子どもは終わらない時もあるし、間違えている時もある。
それでいい。
完璧だったらもうやらなくていいし、必要だったら家に帰ってじっくり取り組み直せばいい。
子どもの学力はそれぞれなのだから、それぞれに必要な分があれば、本来はそれぞれにやるべきである。

学校は、その子どもに応じた学力をつけていき、適切な交流ができるようにしていくことが大切である。
もっというと、その子どもに必要な学力とは何なのかも、考慮してあげるというのが本来の教育の姿である。
全員に一律に、学習指導要領に定められた学力が必要なのかということは、考えるべき点である。
こういうことは、「職務上の義務違反」みたいに言われるので、公務員という立場だとなかなか言えない。
しかし、子どもの未来を真剣に考えるなら、もっと言った方がいい。

さて、そうは言っても、一律の知識に関する学力についてでも、学校として何もしない訳にもいかない。
「やるものがない」という状況に困るご家庭も多い。
だから、プリント配付やオンライン授業の提供ということになっている。

しかし前号も述べたが、ここに関しては企業がこぞって提供してくれているので、ネット環境さえあれば実際は事欠かない。
ちなみに今週から、某大手進学塾が小1~中3の算数・数学のオンライン授業1年間無料提供を表明した。

もしこれで、学校の授業を受けなくても算数・数学がわかるという事態になったとする。
その時、その事態を、学校はどう受け止めるべきか。
単なる知識注入型の授業、できたらいいというだけの授業は、学校には必要ないということの証明になる。

一方で、やはり学校がないと困る、わからないということになれば、それはそれで学校の必要性を見つめ直すきっかけにもなる。

今はそういった学力観についての転換、分岐点に来ている。
学校の役割を見つめ直すための大切な期間である。
この騒動は、今の学校にとって大きなピンチであり、この後の学校にとっての大きなチャンスでもある。

学校を再開しても、以前の学校には戻らない。
今まであったものの中で、いるものといらないものが、はっきり判明してしまった後だからである。
(卒業式練習が不要であることなど、証明済のものが既に出てきている。)

発想を大転換し、このピンチをチャンスにつなげていきたい。

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