相手の要望にどう応えるかについて、オンライン学習会で話し合った。
学校に限らず、勤めていると、様々な場面で多種多様な要望をされる。
各仕事の顧客から要望が来る。
当然と思える要望もあれば、そうでないものもある。
例えば、製品へのクレーム電話や、飲食店での商品へのクレーム。
電話対応をしている人や店員さんには本来罪も落ち度もない。
しかしお客さんからすれば「会社」「お店」という枠組みで、ここに言うしかない。
そう考えると、理不尽な怒りをぶつけられることもあるが、これはある程度まで仕方のないことである。
ただ「だから返品させろ」とか「タダにしろ」とかの無理な要望に安易に応じる訳にはいかない。
第一その人はその店の責任者ではないし、お客さん側の使用方法等の問題という場合もある。
ではどこまで初期対応すべきかというと、最低限の仕事としては、訴えをよく聞いて責任者に報告するところまでである。
責任者、決定権者のやることまで勝手にしては、問題がこじれるばかりである。
問題は、仕事の線引きである。
やれるところと、やれないところ、やるべきところと、やるべきでないところがある。
社会では、役割が明確な仕事がある。
例えば、道端の落とし物を届ける先は、交番である。
火事が起きたら真っ先に報告するのは消防署である。
道路などの公共物が壊れていたら、報告先は役所である。
このように、社会において対応先が明確なものは問題ない。
問題は、誰が対応すべきか明確にわからないものである。
道端にごみが落ちていたとする。
風で飛ばされてきたのか、誰が落としたのかも勿論わからない。
気になるが、それを落とした人も、解決してくれる人も明確に存在しない。
これを拾って処分するのは、誰の仕事か。
多分、誰の仕事でもない。
「役所の人を呼んで拾ってもらう」というのは、不法投棄などの大きなごみの場合だけである。
だから、適当に誰かが拾って処分するしかない。
大谷翔平選手のように「運を拾っているだけだ」と前向きにひょいひょいと拾う人もいるだろうが、少数派である。
恐らく多くの場合、それが落ちていて最も困るという人が拾うはずである。
ある店の前にごみが引っかかていたら、多分その店の人が拾うだろう。
自分の店先にごみが落ちているのはいいものではない。
それぐらいのものである。
学校では、その手の仕事がかなり多い。
落とし物にしても、まず気付いた人が拾い、持ち主を探す。
それでもわからない時に「先生、落ちてました」が初めて発動する。
そういうように指導しておかないと、どんどん持ってきて持ち主不明の物で溢れかえる。
ごみは、気付いた人が拾うのが理想である。
しかしながら、子どもたちは紙ごみやストローの袋などがそこら中に落ちていても一向に構わないということも多い。
この場合、気付いたら拾って捨てることを指導する必要がある。
学校は、それら誰がやるか曖昧なものに対し、最終的に「先生、どうにかして」となりがちである。
これは学校の宿命といってもいい。
落ちているごみなど些細なことであれば、気付いた人で拾えばいい。
しかし、こと人間に関することであれば、誰の課題なのかということが大切になる。
例えば「Aさんをどうにかして」という要望に対しては、担任としては対応せざるを得ない。
しかし、本来は他人をどうこうすることは他人にはできない。
それは担任であっても同じである。
できることならできるが、できないことはできない。
「ない袖は振れぬ」のことわざ通りである。
クラス会議への議題投稿やお悩み相談BOXなどに時々あるもので、「Aさんをどうにかして」がある。
(ちなみに、クラス会議では個人名を挙げたものは議題にしない。
まず投稿者本人に直接話を聞く。)
これは、誰の課題なのか。
Aさん本人はどうにかしたいと思っていないのだからAさんの課題とはいえない。
Aさん自身が「どうにかしたい」と思っているのであれば、それが初めてAさんの課題であるといえる。
その課題をクリアする手助け、サポートをするのは、担任の仕事といえる。
しかしその場合であっても、課題としてはあくまでAさんのものである。
Aさんをどうにかして欲しいというBさん自身の課題かもしれない。
この場合であっても、担任はじめ周囲は手助けをするが、あくまで課題解決者はBさんである。
決して課題解決を他人が代行してあげてはいけない。
もしそれをしてしまうと、Bさんが課題解決をしたことにならず、Bさんには後々また同じような課題が提示されるからである。
子ども同士のけんかに大人は口を出すなとよく言うが、このためである。
下手に大人がしゃしゃり出ると、後々に悪い結果になるのは自明である。
他人をどうにかして欲しい、変えて欲しいという要望は、大抵本人の気持ちの課題である。
ただ、もし担任であれば、どうにもできないと突っぱねるのは多くの場合悪い結果を生む。
まず本人の気持ちにある程度寄り添って話を聞き、どうしたいか本人が決め、それを遂行するための手伝いをするしかない。
他人の課題を一手に引き受けてしまわないこと。
あくまで寄り添う姿勢に留める。
相手の要望にどう応えるかということへの一つの回答である。
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