発達と感情コントロールについて。
『OECD 保育の質向上白書』という分厚い本がある。
タイトルの通り、OECDの出している白書である。
そこに次のグラフが示されている。
脳の敏感性と4つの項目(「言語」「数」「社会性」「感情」)が経年変化でどう変わるかを調べたグラフである。
https://image.slidesharecdn.com/w6engeldraft-150629143341-lva1-app6891/95/insights-from-the-oecds-work-on-early-childhood-education-and-care-5-638.jpg?cb=1436360487
このグラフは、衝撃である。
感情のコントロールと言語に対する脳の敏感性は、生まれた時から既にピークに近い状態である。
つまり、生まれた時から(あるいは胎動期から)感情を込めて話しかけ続けることには、大きな意味があると考えられる。
更に感情のみを見ると、1歳時でピークを迎え、2歳半ばにはピークの半分、3歳には底ちかくまで急落する。
つまりは、感情面の教育については、生まれてから遅くとも2歳半ばまでが大きな勝負どころである。
乳幼児期にたくさん笑顔で話しかけられ、赤ちゃんが笑ったり泣いたりしていることにいちいち反応してあげること。
面倒な「いやいや期」に親をはじめ周囲が感情を受け止めること。(これは難関。だからこそ価値が高い。)
これらが最も重要であると考えられる。
つまり幼児の「性格」と言われるものが、学校教育で本質的に変わるということは、ほとんどないといえる。
4歳までにはその基礎が固まるということである。
「三つ子の魂百まで」というが、あれは本当のようである。
しかし小学校であっても、子どもが「変わった」ように思える。
なぜかというと、グラフを見てもわかる通り、社会性(peer social skills)は伸び続ける。
仲間との関わりの能力が発達するため、そこが主に変わるのである。
例を挙げると、もともと「怒りっぽい」性格とする。
その場合、幼児期はこれがダイレクトに感情として外に出る。
しかし社会性の発達に従って、周りの目を意識して、我慢ができるようになる。
つまり、幼児期から小学校段階においては、仲間と交流するような学習が成長の肝である。
学級づくりの重要性がここでもわかる。
ここで忘れてはならないのは、社会性でその表出をコントロールしているだけで、必ずしも怒っていない訳ではないということ。
一方で同じ場面であっても、感情面での怒り自体がそもそも湧きにくいという子どももいる。
そこが性格の違いである。
「そもそもが穏やか」という子どもと「怒りを外に表出しない」という子どもは、見た目が同じでも内面で起きていることは別物である。
例えば列に並んでいたのに自分の前で終了してしまった時、どういう感情が湧くか。
「惜しい~。残念だったな~。」としか思わない人がいる。
一方で「自分は被害者」という怒りの感情がふつふつと湧く人とが存在する。
外から見たら、両方同じように黙っているのだが、その違いである。
さて、グラフの他の項目も見てみる。
言語や数に対する脳の敏感性も、緩やかに下り傾向とはいえ、高い水準を維持し続ける。
幼稚園段階で、言葉や数の概念を形成しておくことの意義は大きいといえる。
(だからといってごりごり勉強をさせるというのは違う。
あくまで自然にそういうものにふれる環境づくりをすることが大切である。)
脳の発達というのは、教育において抗い難いものがある。
例えば脳の一部に問題があるというのを無視して何かを教えようとしても、それは逆効果になり得る。
科学的データを無視せずに、教育の在り方を根本から考え直していく必要がありそうである。
2020年1月18日土曜日
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