2019年11月24日日曜日

選択できるのは幸福といえるか

学級の子どもにとっての「幸せ」とは何か。
これは学級担任として常に持ち続けている、主要テーマである。

このテーマに関連して、今回は「選択肢」について。

常に選択できるのは幸せか。
ここに関して、ずっと答えが出ない。

世の中には、選択できない不幸というのがある。
路上生活で、それしか食べるものがない子ども。
それをするしか生きる手段がない子ども。
色々な考え方があるが、やはりどう考えても、それが幸福とは思えない。

選択できる不幸というのがある。
AかBが選べる。
よくよく検討して、迷った挙句、Aを選んだ。
しかし、Aは思ったようなものではなかった。
Bがすごく良く見えてきたが、もう手に入らない。
これは、(見方に問題があるとはいえ)不幸である。

選択できる幸福というのがある。
AかBか好きな方を手に入れられる。
明らかにAが好き。
迷いなくAを選んで手に入れた。
文句なく幸せである。

選択できなかったけれど幸せというのがある。
最初から、Aということに決まっていた。
そして、今でもAが好きである。
これも、幸せである。

余談だが、離婚率が最も低いのは、「見合い」による結婚の場合だという。
実際、私の祖父母は、見合いで結婚したということを聞いた。
それも、相手の顔も見ない内に、もう既に全て決まっていたと祖母が語っていた。
戦争中で、色々な世相的事情があったそうである。

それで、嫌じゃなかったのかと聞いたら、「えかったっちゃねえとかね~」(良かったと思う)と言っていた。
お蔭様で自分が今ここにいることを考えると「えかったっちゃかね」と思う。

選択肢がないということは、あながち不幸とも言い切れないようである。
(しかしながら、単に本人に他の選択をしても幸せになれる素養があるだけかもしれない。)

これは「自由度が高い」ということにも関連する。
これが、いいことがある反面、手放しにいいとも言えない、というのが実感である。

今の自分の学級は、割と自由度が高いと思う。
しかしながら、何かにつけて「(先生に)決めて欲しい」という声は結構上がる。

なぜか。
ずばり、自由で選択できることが、往々にして「争いの種」になるからである。

自分なりに考察してみた結果、どうやら選択の自由の良し悪しには条件があることがわかってきた。

例えば、何かを選ぶ時。

学級の誰がどう選択しても、その選択したものが全員に行き渡るなら、選択が直接幸福感になり、問題は起きない。
例えばABCの三つから一つ選んでいいという状況。
学級30人で、ABCもそれぞれ30個ずつ用意されている。
これなら、争いは起きようもない。

一方で、誰かの選択が誰かの選択を阻む状況にある場合。
これは、選択できることが逆に不幸を生む種になり得る。

先の状況で、ABCが10個ずつしかない。
Aが大人気で、30人みんながAを欲しがったとする。
この場合、10人は満足して、20人は妥協してBかCになる。

更に言うと、Aを獲得した10人の中には、自分だけ望み通りになったことへの罪悪感を抱く人もいる。
Aが欲しいのに手に入らなかった周りの人を思って心を痛める人も出る。
そうなると、みんなが不幸である。
「最初からABCが割り当てられている方がまだいい」という人も当然出る。

競争はこれである。
1位は一人であり、最下位まで順位がつく。
一方が勝つから、他方は負ける。
いわゆる「ゼロサムゲーム」である。

学級における自由度は、どうあるべきか。
これは、個人の嗜好性や考え、哲学等に大きく左右される。

「自分だけが幸せになればいい」という考えの人にとっては、「平等」自体が不満である。
上下の差がつくことを求める。
勝負ではっきり白黒つけたい。
だから、選択肢がないことは耐え難い。
ただし、失敗した時の不幸度も高い。
勝ったら優越感で満足するが、負けたらものすごく悔しい。(質が悪いと、文句も言う。)

「みんなが幸せになるのがいい」という考えの人にとっては、自分の選択は正直二の次である。
自分だけが満足するより、争いが起きないことの方がいい。
だから、特にけんかや暴力は嫌いである。
この人たちにとって、選択の自由度は高くても低くてもどうでもいい。

だから、学級に求めるものが、個々で異なる。
「もっと自由と選択肢が欲しい」となるか「もっと規律と安定が欲しい」となるか。
どちらにも妥当性がある。

理想は「自由に選べるけど争いがない」という状態である。
しかし、これが実現している時、実は陰で誰かが我慢していることが往々にしてある。

学級における選択の自由はどうあるべきか。
まだまだ暗中模索である。

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