2019年7月26日金曜日

「早く起きなさい」を言わずに済むにはどうするか

早くしなさい。
起きなさい。
勉強しなさい。

何でもそうだが「〇〇しなさい」という命令と実行は、両者にとって大きなストレスである。
言うことをきかせたいのに相手がきかない苛立ち。
言われれば言われるほど「お前はダメな奴」と言われている気がして余計にききたくなくなる苛立ち。

自分の脳と体、あるいは人間と機械の関係なら、命令関係でいい。
入力と出力という関係だからである。

人間関係はそうはいかない。
命令と実行は主従関係である。
自主自立や自治とは真逆にある。

しかし、命令を出す側としては、願いや目的がある。
相手が実行してくれないと実現しない。

命令される側としては、意義はわかっている。
やらねばならないこともわかっている。
しかし、言われるとやる気を失うのは人間の本能である。
この辺りは、犬猫との大きな違いである。
(犬は、主人に従って褒められることが生きる喜びである。)

では、どうするか。

結論から言えば、自然にそう動くような「環境」を整えることである。
人間の都合が作り出した不自然ではなく、自然の摂理に従うことである。

一番分かりやすい例で朝に「起きなさい」と言われずにすっきりと起きられるようにしたい、という場合を考える。

まず、当たり前だが、早く寝ていないと、早く起きられない。
睡眠不足のままで起きるのは「不自然」である。
よって「早く寝られる」環境づくりをまず整える。

寝る前のスマホやゲームが悪影響なのは言うまでもない。
寝る前に興奮系はダメである。
入眠に最適な、ゆったりとした物語の絵本などを読み聞かせしたり、あるいは自分で読んだりできればベストである。
(つまり「怖い話」のようなホラー系は寝る前はいけない。興奮する。)

食べる時刻も大切である。
就寝の3時間前には食事を終えているのが望ましいというのが近年の研究の定説である。
朝、胃もたれしていたら当然起きにくい。

サーカディアンリズムに注目すると、覚醒の鍵は陽の光である。
身体は、朝陽に当たることで、睡眠と覚醒のリズムを作る。
シャッターや遮光カーテンで朝でも真っ暗、という完全に人工的な環境の部屋で寝ていたら、当然寝起きは悪くなる。
枕の向きを東に向けてカーテンの下に置くだけでも、日の出とともに目に朝の光が入り、覚醒はぐっと自然に、楽になる。
つまり「起きなさい!」の声をかける前に、カーテンと窓を開けて日差しと新しい空気が入るようにした方が、覚醒効果が高い。

ちなみに私は、睡眠を邪魔されるのが最も嫌いである。
嫌いなものを無理矢理口に押し込まれるのと同じだと思っている。
選択や心身の自由を侵害されることが不愉快である。

だから、寝る時には携帯電話を近くに置かないし、目覚ましもかけない。
もし夜中にメールで起こされるなどしたら、多分その人を恨んでしまう。
だから、一切音も振動もしない設定で、しかも別の部屋に置いてある。
安心して眠れる訳である。
(ただしこれは、24時間体制で対応する重い責任の立場にある方だと、実行できない。)

親が「部屋のカーテンを開ける」という行為をする際には、「起きなさい」という声はいらない。
とりあえず開けるだけである。
そうしないと、子どもの中に例の不快感がこみあげ、なぜか親が恨まれる対象になる。
ただ、朝だから当然部屋のカーテンを開けただけ、という体をとることが肝要である。

後は、放っておいて、その内自分でのそのそ起きるのを待つ。
起きなかったら、遅刻して本人が気まずい思いをするだけである。
学校には「寝坊したので遅刻します」と電話だけ入れればよい。
痛い思いも大切な学習である。
ここが我慢比べの肝である。

ルーティンでリズムを決めてしまう。
勝手に覚醒する状態を習慣化できればいい。
「起きなさい」と言ってもらえないとわかることも大切である。

親が子どもにできることといったら、環境づくりだけである。
直接「起きなさい」と声をかけることは、最後の最後の下手の最終手段である。
(「布団を引き剥がす」は、実行力を行使しているという点でさらに酷い下手の手段である、と自覚し敗北を覚悟した上で、断固実行する。)

学校のあらゆる教育でもいえる。
ルーティン的に訪れることに対し「〇〇しなさい」の命令を直接与えないと動かないのでは、子どもは育たない。
「チャイム問題」もこれにあたる。
要は、パプロフの犬よろしく音に反応するのではなく、自分で時計を見て動けるようにしよう、ということである。
(チャイムや放送は「教室に戻りなさい」の外的サインであり、命令である。)

止むを得ず実行力を行使した時は、こちらの敗北宣言である。

それをしやすい環境を整える。
自主自立や、自治を考える上での基本中の基本である。

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