2019年7月23日火曜日

偏差値より「変さ値」を

今年度も実施された、全国学力・学習状況調査について。

今年度もいずれ結果が集計されて、やがてランキングされる。
実施した側は比較をしないといっても、ネット上ではご丁寧にされる。
ただし、公立校のみの結果である。
都道府県別のデータは公立小中学校の結果しか公表されていないためである。

以前にも述べたと思うが、再確認。
県別ランキングは、ほぼ全くあてにならない。
国立大の附属校と私立校の結果が一切入らないためである。
(参考文献:「学力」の経済学 中室牧子著 ディスカバー21
https://www.amazon.co.jp/dp/4799316850

特に私立校が多い都心部等の地域では、そこを入れると結果が大幅に変わるという。
この無駄なランキングは、変な競争意識とダメな優越感&劣等感、危機感を煽るだけである。
(比較しない、あなたはオンリーワンだと子どもに口で言いながら、その実「平均」と比較が大好きである。)

偏差値とは、平均値を中心(50)とし、平均を重んじる思想の表れである。
(ちなみに私は大馬鹿なので、教師の職についてしばらく経ってから各学校に「偏差値」があることを知った。
数学で多少やっていたはずなのだが、必要性がなかったため、記憶から消えていたのかもしれない。
自分の学校選びに偏差値を全く見てこなかった証拠である。
大学選びの際も「小学校教師を目指すのに東大にまで行く必要はなさそう」ぐらいの感覚だった。)

「偏差値」より、私は「変さ値」(松尾造語)の方が大切ではないかと考えている。
特徴的に、他とは違うことである。

一般的に「変」と言われるのは、褒め言葉ではない。
しかしながら「君は普通だね」「どこにでもいるタイプだね」と言われても嬉しくないのではないか。

実際、学校教育では「変さ値」を求めない。
なぜならば、学校教育は、到達すべき学習内容の程度が定まっており、そこを基準とするからである。
つまり各学校、学級で「平均」の値を上げることが求められる。

テストでは独創的であることよりも、学習内容を忠実に再現する力が求められる。
学校生活においても、協調性が何よりも大切である。
「みんな揃って」が習い性になっており、大好きなのである。

あらゆることにおいて、あまり「普通」から外れていないことが大切である。
だから、学力状況調査でも、平均点を必ず出す。
「普通」への到達度を知らせるためである。

また、「普通」から外れた「変なやつ」は、いじめの対象でもある。
理由は「普通じゃない、変だから。」である。(ちなみに、能力的に上に突出していてもいじめられる。)

これは、よろしくない。
よろしくないが、現状仕方ないことである。
先に述べたように、大人も子どもも平均から見た比較、ランキングが大好きなのだから仕方ない。

そして都道府県間の学力を比べたところで、所詮「どんぐりの背比べ」である。
こんなことに世間が一喜一憂、反応するから、教育委員会の方も指導せざるを得ない状況になって、学校現場も困るのではないかと思われる。
自分たちで互いに首を絞め合って、苦しみあえぐ。
どうしようもない「ドS&ドM」な生き物である。
(ちなみに、これは文科省が本来求めているところではない。
世間が勝手にランキングをつけて騒いでいるのである。)

ところで、平均、普通、均質、手順に沿った再現性、こういったことに特化して強いものがある。
そう、コンピューターである。
ロボットの大得意分野である。
計算速度が最もわかりやすいが、人間の処理速度の比ではない。
こういう答えのある作業系能力が必要な職業は、すべてロボットが代替するようになる。

そう考えるとやはり、ここで学校が子どもに育てるべきは「変さ値」の尊重である。
どんなに「普通」に近づいても、ロボット以下ということになる。
ロボットの作業効率は、人間とは桁違いである。
ロボットにはない人間としての特徴、能力が求められる
「変」はマイナスにも捉えられるが、唯一無二の最強の武器にもなり得る。

例えばわかりやすい例として、声。
「声が変」という理由でいじめられた、という経験のある人は結構いる。
一方で、その経験を乗り越え、その天から与えられた声を最強の武器にして、世に大きく出た人たちは多い。
例えば、元ドラえもんの声優の大山のぶ代。
例えば、歌手の大塚愛。

よくよく考えれば、声優や歌手が「普通」の声では、需要がない。
「変」=平均とはかけ離れているからこそ、唯一無二になる。

そして自分の「変さ値」を認めてもらうには、仲間の「変さ値」も認めないといけない。
「変」が、排除の対象にならない。
むしろ、個性として歓迎される集団を育てるような教育が大切である。

学力状況調査の勝手なランキング。
無意味な平均、普通との比較。
わかるのだが、いい加減に下らないことは止めないか、と言いたい昨今である。

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