2022年1月27日木曜日

お節料理へのニーズの変化と本質

 年末、道徳の学習で、お正月について扱った。

日本の伝統的な文化についてである。


その中で「おせち」を詳しく取り扱った。

食材に込められた願いについては、おせちを食べない家庭も増えていることもあり、意外と知らないものである。

(子どもの指摘した通り、ほぼダジャレだが。それでいいのである。)


お節料理は、神様にお供えし、共に食べるための保存食である。

「火の神様」を休めるために、正月の三が日は台所に火を入れない。

即ち、料理から解放される日でもある。


しかし現代においては、こうならないことが多いという。

昔はお節料理の中心である甘いものが御馳走であったが、今はそうでもない。

普段から甘いものも御馳走も溢れており、これだけではやはり飽きる。

そうなると、本来のお節料理にはない豪華な海鮮料理や肉料理が加わったりする。

それでも、三日間をお節料理だけではなかなか満足できない。


従って、三が日も台所としては特に変わらない状況になる。

(あるいは、お取り寄せや外食という手もある。)

元は休むための仕組みだが、その点については時代のニーズにマッチしなくなってきているとも言える。


同じような現象は、社会全体にも起きている。

本来は誰もがお休みするはずの三が日だが、一月一日から営業中の店もたくさんある。

他が休んでいる中で商売すれば、儲かるのは自明の理である。

そうなれば、みんな休まなくなるのも必然である。


では、営業しているのが悪いのかといえば、それは全く違う。

それぞれ都合も事情もある。

顧客の強いニーズがあるからこそ、自然と成り立っているといえる。


誰かに都合のいい特定のルールに全員が揃えようということ自体、時代に合わない。

誰かの都合に合わせる時、誰かが不都合を起こしている。

例えば、昨年から今年にかけて、感染症対策としての営業自粛で揉めに揉めたが、それも同様である。

「自粛した場合は支援金。だが強制しない」のように、相手の都合に応じた選択肢の提示、幅が必要である。


学校も、もはやこの特定のルールに揃えようということに無理が生じている。

個々のニーズが異なるのに対し、同一のものを提供しても、うまくはまらない。

給食のアレルギー対応のように、あらゆるものに個別の対応が必要になっている。


そうなると、学級担任には対応の選択の幅、裁量権が欲しい。

裁量権の大きさとルールの厳重化は、トレードオフの関係である。

今は、感染症対策やタブレット端末使用という新しいことに対してルールが厳重化している。

その一方で、個別の特別対応を迫られるという状態である。

裁量権がある程度あれば、スムーズに対応できる。

「裁量権は一層制限するがよりよい対応をせよ」という無理難題を突き付けられている状態では、全員が不幸である。


学校にも、規制の緩いおおらかな時代があったという。

今では信じられないぐらい、学校と子どもと家庭の距離も近かった。

例えば「子どもを教師が自家用車で送る」「送った先のご家庭で夕飯をご馳走になる」

といったことも、一昔前は珍しくなかったようだが、現代では禁止事項であり、そもそも起き得ないことである。

現代は子どもにとっても、ボールで遊べる場所も木登りも何もかも、ルールと禁止が乱立している状態である。


子どもの安全を脅かす要素は、極力取り除かれ、「安全」な学校生活が求められる。

(「 」付なのは、それが将来的に本当の意味で安全とはいえないと考えるためである。)

それら子どもの行動を統括する担任に課せられるルールの多さと厳しさは、想像以上である。


しかしながら、子どもは時代が移ってもあくまで子どもであり、ルールに縛られる存在ではないため、勝手気ままに動き回る。

そして、それが自然であり、そうあって欲しいと願う。

それをわかって敢えて口うるさく言うのが親や教師の役割の一つである。

「廊下を走らない」というルールがなくならない以上、それを注意する行為もなくなることはない。

それは、どんなに時代が移っても変わらないことである。


現代におけるルールを守らせようという行為の多くが、揃える意識に端を発しており、子どもへの愛情とは違うように思う。

本当に必要なルールであるかどうかの再検討が大いに必要である。


恐れに端を発する行為は、やはりどこかで無理が生じる。

人間は元来、幸せを主体的に選んで生きる存在である。


お正月のお節料理へのニーズが変わっても、幸せを求める本質は変わらない。

お正月はゆっくり休むのだという目的に合致するのであれば、何を食べて過ごしてもいい。


学校も、時代のニーズの変化はあるけれど、子どもの幸せと成長に資する場であることは忘れずにいたい。

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