2020年6月21日日曜日

夏の登校と熱中症問題考察

夏休みの期間変更について、各自治体から続々と出ている。
概ね、今年の夏休みは2週間程度のところが多いようであるが、中には1週間程度という自治体もある。

例年に比べ、大幅に夏休みが短くなるが、反対の声はそれほど上がらない。

道理として、このままでは明らかに授業日数が足りないため、当然である。
これ自体は単純な算数であり、このまま年度末まで足し算をしても授業時数が届かないのは明白であるため、反論の余地はない。

世間の多くの大人も、これには反対しない。
元々一般的な日本人の大人にとっての夏休みなど、お盆の期間ぐらいのものである。

またそもそも家に子どもがいない、学校に通っていないという場合であれば、反対する理由もない。
子どもがいる家であれば、前号書いた保育的機能のこともあり、夏休みが短くなるということは、むしろ助かる面も多く出る訳である。
これらは、大人の側の都合というだけの話であり、教育そのものの話ではない。

一方で、子どもというのは反対の声を上げることはできない。
多分、今現在早く学校に行きたい子どもの中にも、夏休みの短縮について賛成している子どもはそう多くないはずである。
夏休みが短くなって嬉しい、という子どもが大多数という状態は、まず想像できない。

さて、教育の立場からすると、本質的に大切なのは、学力や人間性等に関わる、成長の問題である。
さらに、子どもの命の安全を守るという観点である。

夏真っ盛りの中の登校は、子どもの安全を守り、学力他を伸ばすことになるのか。

そもそも、今まで夏休みが何のために設定されていたかである。
夏休みにしか体験できない学習を云々色々あるが、要は暑すぎて授業をしてもまともな効果が出ないからである。
特に体育などは、水泳以外には実施すること自体が不可能である。(そして今年度の水泳は実施不可能である。)

もっと深刻な問題として、熱中症である。
そもそもが冷房完備でない自治体が結構多い。
元々が涼しい地域ほどそうである。

次のものが、令和元年9月に文科省が発表した公立校の冷房設置状況調査の結果である。
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/31/09/__icsFiles/afieldfile/2019/09/19/1421285_1.pdf

これを見ると、3年前の時点での公立小中学校の冷房設置率は50%未満であった。
しかし近年、温暖化や異常気象による熱中症問題を受け、各自治体で急速に設置が進んだ。
実際、設置率の折れ線グラフを見ても、急上昇している。
そして現在の時点では、9割の学校に冷房が設置されているはずである。

ただ、たとえ冷房完備であっても、密室が不可となると、これはまた問題が起きる。
せっかく冷やしても、頻繁に換気をすることになる。
色々指針が出てはいるが、換気の頻度は例年よりもどうしても多くなる。

エコの面から見た環境的な問題もそうだが、もっと切実な問題として、学校というのはお金がない。
この冷房使用にかかる費用は、莫大である。
まして、使用期間を延長するのである。
どこから費用を捻出するのか。
それとも、使いすぎないよう厳しい注意を受けながら、ぎりぎり熱中症を出さないレベルの使用でキープするのか。
その場合に熱中症で倒れたら、一体誰の責任になるのか。

折角冷房を設置しても、また新たな問題をクリアしないといけない。
一難去ってまた一難である。

夏休みの分を登校させれば学習が追い付くという論理。
算数的には正しいかもしれないが、実際の社会というのは算数のようにすっきりした答えが出ない。
夏の登校でも学習モチベーションを保てる子どもは、恐らく自宅学習でもいける子である。

どのような環境下、身体的・心理的状況下で授業を行うのか、考えてみる。
頭の中でシミュレーションすると、かなり厳しい。

ただ、オンライン学習が通学と認められるようになるなら、話は別である。
夏休みの一部をオンラインで代替できれば、登校日を大幅に減らすこともできる。
今回に限らず、遠隔授業ができる環境づくりを平時より進めておくのは、今後の様々な問題に対処できる大きな力になる。

元々何のために、どのような理由で夏休みがあったのかを考える。
特に熱中症問題は命の問題であり、最優先事項である。

難題が続くが、解けない問題はないと思って、できることに前向きに取り組んでいきたい。

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