2019年6月8日土曜日

座席配置と「いたずら書きの法則」

今年度、座席配置を変えている。
4人組で1つの班にし、それを時計周りに8つ、円状に配置し、中央を空けた形である。

↓イメージ図

  前面黒板
7班 8班 1班
6班    2班
5班 4班 3班
  後方ロッカー

全座席を前方、黒板の方に向けて配置するいわゆる「講義型」「スクール型」をやめてみたわけである。

そもそも、日本の学校ではなぜスクール型が一般的なのか。
それは「一斉伝達」を前提にしているからである。
知識の伝達を基本スタイルにしているためである。
この配置では、常に教師の方を向いて話を聞くことになる。
子どもが全員自分の方を向いているため、教える側も伝達に集中できる訳である。

この基本型を変えることによって、常に仲間の顔が見える状態になる。
一方で、黒板の方を常に向かない=教師の方を常に見ないことになる。

これは、単に型を変えただけでなく、一つの決意である。
「教育観」あるいは「子ども観」の変換である。
型を変えると、現象が変わる。

一番の懸念事項は、スクール型のメリットが享受できなくなることである。
つまり、教師の方を向かなくなり、おしゃべりがしやすくなる。

今年度は、持ち上がりである。
「話を聞かない」という状態が、逆に想像できない状態である。
つまり、どんな型であれ、話は聞けるだろう、ということが前提にある。
安全が既にある程度確保されている状態といえる。
「安全・安心」があるからこそ、思い切って挑戦できたという面がある。
(異動先で初めて会う子どもたち相手なら、なかなか勇気が出ないかもしれない。)

実際、やってみてどうだったか。
子ども同士の会話が増えたか。
増えた。
ただし、増えたのは単なるおしゃべりの方ではなく、話すべき時に話すようになったのである。

どういうことか。

私はこれを
「いたずら書きの法則」
と名付けた。

皆さんは、子ども時代、あるいは学生時代に、授業中に落書きをして遊んだことはないだろうか。
あるいは、それがうっかり見つかって叱られた(というより怒られた)ことはないだろうか。

あるはずである。
いや、あって欲しい。
音楽や文学の偉人たちに、ヒゲの一つぐらい書いたはずである。
あるいは、ノートや教科書の角にパラパラ漫画を黙々と描いていたはずである。
(遠目に見ると、すごく学習に集中している感じなのもポイントである。)

なぜやるかというと、暇だからである。
そして、本来それをやってはいけない状況だからである。

これが、いつでもやっていい、大いにやりなさい、と言われると、それほど楽しくなくなる。
隠れてやるから、楽しいのである。

おしゃべりや立ち歩きにも、似た構造がある。
いつでもやっていい、という状態だと、価値が下がるのか、その行動が減るのである。

これは、なかなか信じてもらえないし伝わりにくいのだが、実際に教えていて確信している現象である。
立ち歩きがひどい、という子どもは、大抵、「じっとしていないといけない」という強迫観念にかられている。

某お笑い芸人の「押すなよ、押すなよ!」という「振り」と同じである。
「動くなよ、動くなよ」という言葉は「動かずばやまじ」という状態を引き起こす。

逆に「歩いていいよ」というと、必要な時以外は割と席に着くようになる。
これは拙著『切り返しの技術』にも書いた話だが、真実である。
https://www.amazon.co.jp/dp/4181907120

1回や2回、あるいは10人程度の話ではない。
千葉県内限定とはいえ、ありとあらゆる地域、学年で実際に起きた共通現象である。
特別支援教育に詳しい方なら、その心理メカニズムについて解説できるのではないかと思う。

つまり「いたずら書きの法則」とは、次のような法則である。
法則1 やってはいけないと言うほど、その行動を強化する
法則2 いつでもやっていいと言うと、必要な時以外にはあまりやらなくなる

いたってシンプルである。
「スクール型」には、おしゃべりを止めさせて話を聞かせたいという根拠がある。
しかしながら、それがもしかしたら逆効果を生んでいるかもしれない。

あくまで、実験段階である。
しかしながら、現在はまっている感じを見ると「中らずと雖も遠からず」という状態にはなっているのではないか。
クラス会議をやるのにも、椅子をさっと動かすだけで、大変便利なのである。
ぜひ6月28日、29日の公開研究会にでも、様子をご参観いただきたい。
http://www.el.chiba-u.jp/kenkyu.html

眉唾の方も多いと思うが、何かで「いたずら書きの法則」を試してみてはどうだろうか。

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