大学での学びのシェア。
「シェア」と表現する場合、ただの伝達と違い、本人の気付きなどが入る。
健康教育に関連して、学級経営への気付き。
「ヘルスプロモーション」という概念がある。
直訳すると「健康の増進」である。
世界保健機関の定義では
「人々が自らの健康をコントロールし、改善することができるようにするプロセス」
(World Health Organization,1986)とされている。
30年以上前から定義されている概念であるが、一般的には耳慣れない言葉である。
さて、ここに関して、医学でも古くからは
「ハイリスクアプローチ」がされてきたという。
つまり、重度の病に侵されている人へのアプローチである。
既に健康を害している人への治療行為である。
これが大切なのは言うまでもない。
しかし、ここに注力している限り、常に「不健康予備軍」が新たに重度の病気になるという。
「病気ではないが不健康な生活習慣」という状態にいる層は、正規分布の中央周辺であり、かなりの割合になる。
つまり、この中間層に対してもアプローチしていく必要がある。
これを「ポピュレーションアプローチ」という。
これを調べると
「多くの人々が少しずつリスクを軽減することで、
集団全体としては多大な恩恵をもたらす事に注目し、
集団全体をよい方向にシフトさせること」
とある。
これが、学級経営のアプローチと非常に似ているのである。
ハイリスクアプローチで注力していると、学級経営に困難が生じやすい。
いつも目立つ「あの子」に教師が注目するため、真面目にやっている大多数が置き去りになる。
そうすると、真ん中の層が、ハイリスク群側へ徐々に移動する。
その方が、自分も注目されるからである。
やがて、全体レベルが下がり、手に負えなくなる。
ポピュレーションアプローチでいくと、「全体」が優先になる。
全体的に良い方向にシフトさせようとするので、ハイリスク群も良い方向に行く。
こうすると「安定」する。
一方、私が様々な場所で提唱しているのは、
「ハイパフォーマンスアプローチ」(注:松尾造語)
とでもいうようなやり方である。
先の健康の話でいうと、平均以上に健康的でパワフルな人の生活習慣に注目するやり方である。
まず高パフォーマンス群に注目する。
そうすることで、全体の「理想モデル」を示す。
それを周りが真似する。
全体がシフトする。
高パフォーマンス群は、更に上の課題に挑戦する。
更に全体がシフトする。
単純化すると、こういう構造である。
実は、何ら目新しいことではなく、社会の多くのものが、こうやって発展している。
生活レベルで例えると、今やうまいラーメン屋、美味しいスイーツの店は、乱立している。
昭和の時代では考えられないハイレベルの店が数多くある。
それは、先駆者を真似て、周りがどんどんレベルアップしたからである。
全体の平均レベルが上がった結果である。
そうすると、元々高級だったものが、安価でいただけるようになる。
一部の人しか手にできなかった良いものが、多くの人にとって手が届くようになるのである。
つまり、全体に恩恵がもたらされる。
これをやると、実は先の例でいう「ハイリスク」群も救える。
全体的に自分に余裕ができるので、ひどい状態を放置しなくなる。
または「そういうのもあるよね」と許容する幅ができる。
「自分を守ることで手一杯」から「人を助けられる」という状態になる。
そうすると、互いに感謝の感情ももて、集団としての質が高まる。
ポピュレーションアプローチを目指すなら、ハイパフォーマンス群に注目していくのをおすすめしたい。
2019年6月14日金曜日
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