2020年10月28日水曜日

学級は環境づくりが第一

 前号で「子どもの裁判所」について書いた。

要は、集団には子どもが自主的に守ろうとするきまりが必要という話である。


今回は、そこに関連して、学級の「荒れ」やトラブルについて書く。


子ども集団の話をする前に、まず自分自身を振り返ってみて欲しい。

自分は、意志力が強く、忍耐力がある方か。

あるいは、継続力がある方か。

社会生活上のルールや約束、〆切等をきちんと守れる方か。


多くの人は、ここに「No」と答えるのではないだろうか。

前にも書いたが、これらには環境が大切である。

安きに流れやすい環境があれば、意志を貫くのは難しい。


いつもついテレビを観てしまう人が、それをせずに勉強しようと思ったとする。

しかし夕飯時にテレビを観る習慣がある家庭であれば、そうでない家庭に比べ、一気に遂行が難しくなる。


明るく前向きに生きようと決意する。

そのために、嫌な言葉を使ったり、他人にマイナスな感情をなるべくもたずに生きようと決意する。

しかし、マウンティングや言葉の暴力に溢れているようなSNSにすぐふれることができる環境にあれば、これは難しい。


つい飲み過ぎてしまうので、付き合いの酒を減らそうと決意する。(ここ最近はその心配は不要かもしれないが。)

しかし、車で通勤の人に比べて、電車通勤の人は、道すがら飲みにいきたくなる可能性が格段に高まる。


その仕事の〆切日より、大幅に早く仕事を終わらせようと決意する。

しかし、進捗を確認する人がいなければ、〆切ぎりぎりにならないと、やる気が起きない。

途中経過を報告しないといけない上司や顧客がいる人に比べて、早めに取り掛かる確率は大幅に下がる。


どれも、環境のなせる業である。

個々の人間がだらしないとかしっかりしているとかだけではなく、環境の影響がかなり大きい。

同じ人間でも、環境次第で、行動は180度変わる可能性がある。


ここまでを前提に、学級集団の話に戻る。

学級集団が「荒れる」原因は、この環境要因が大きい。


例えば、ルールについて。

いちいち細かなルールが決められている割に、それらが平気で破られ、破った場合も特にお咎めなしだとする。

こうなると、坂道を転げるように、一気に様々なルールを破るようになる。


対策の方向は大きく二つ。


一つは、ルール順守の推奨。

ルールをきちんと守っているかのチェックをし、きちんと守っている人が認められる。

逆にあまりにひどい人には、何らかの制限、ペナルティが粛々と課される。

「子どもの裁判所」は、ここをきちんと担保しているため、集団づくりへプラスに機能する。


もう一つは、ルール撤廃の方向。

守られないでも何ら問題ないようなルールは、そもそもルールとして不要である。

全員で、撤廃を検討すべきである。

前号の話でいうと「子どもの法典」の見直し作業である。

これを全員で検討した上で「やはり必要」と議決された場合、初めて本物のルールとして作用し始める。

「以前からある」「そういうものだから」というような誰にも明確な理由が言えないルールは、ルールとはいえない。


こういったルールに対する適正な環境を作るのが、担任の仕事である。


また、トラブルが多い学級は、不要な物が多い。

端的にいって、散らかっている。

もっとはっきり言うと、ぱっと見た瞬間から汚い。


物も環境である。

高学年によくあるが、不要な物を多くの子どもが持ってきている環境。

それを持ってこないと、仲間に入れてもらえない感じがする状態。

それを放置していたら、将来的なトラブルの種が育つのは目に見えている。


ひも類が、いたる所にだらしなく床に垂れ下がっている教室。

誰かが足を引っかけて転ぶのは時間の問題である。

これも、ケガを誘発する環境である。


集団がだらしないほど、いちいち細かく指示するのが、担任の仕事である。

(私はよく子どもに言うが、「何度もいちいちしつこい」のは、何度も言ってる側ではなく、何度言われても直さない側の方である。)

逆に、集団がしっかりしてくるほど、細かい指示は一切不要になる。


だから、担任として楽しく快適に過ごしたいのなら、よい環境ができるまでは、苦労し続けることである。

それまでは、楽しい学級担任ライフはお預けである。

細かく物やらルールやらの環境の指導をして、いちいち同じことを何度も言って、やっと良くなったと思ったらまた物が散らかって。

その繰り返しで、だんだんと良くなるものである。


何事も、環境づくり。

具体的には、手をつけやすい物の環境整備から。

学級の荒れが心配になるなら、まずはそこからである。

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