オンラインの 「学級づくり修養会HOPE」で
「GIGAスクール構想における子どもたちの安全をどう確保するか」
をテーマに話し合った。
学習用個人端末の扱い一つをとっても、自治体ごとに対応が全く違うため、様々な視点で意見が出された。
企業のICTスペシャリストの方も参加していたため、これまでの教育ソフトの変遷についても学べた。
会全体を通してのまとめとしての気付きは
「正しく使うはずという前提が危険」
である。
言うなれば、端末使用に対し善に基づく考え方で考えると危険である。
悪を前提にというと聞こえが悪いが、制度設計上、まずはそれが必要である。
「きっととんでもなく危ない使い方をするだろう」という前提でまず考える。
なぜならば、ほとんどの子どもたちは端末に対し、知識も技能も未熟な状態だからである。
幼児に刃物という例をよく出すが、それである。
その危険さを知らないのだから、必ず危険な使い方をするという大前提がないと、とんでもない大けがをしてしまう。
自由に上手に使えるようになるのは、十分にリテラシーが発達したずっと先の話である。
例えば、知識ゼロの赤ん坊が使うベビーグッズというのは、安全面に対し細心の注意が払われている。
細かくばらばらになるものだと飲み込むからそうならないようにするし、対象年齢も定める。
どんなに大きく口を開けても絶対に飲み込めない大きさが計算されている。
ひもの類も絶対に切れないような構造になっている。
最悪飲み込んでも大事に至らないよう穴が開いていたり、角がなかったりする。
指を挟んだり首がしまったりといったことも起き得ると想定して、そうならない作りにする。
とにかく危険な使用を大前提とした、超安全設計である。
この超安全設計の思想を見習って、子どもたちには端末を与えていく。
「危ない使い方するなよ」などと言うだけでは、単なる「フリ」にしかならない。
危ない使い方ができようもない形で与えていくところからスタートである。
インターネット上のあらゆるトラブルを想定しておく。
チャットによるいじめ。
「いいね!」に関わるトラブル。
アカウント乗っ取り。
危険なサイトの使用。
課金。
パスワード忘れ。
どれも十分に想定内である。
これを
「うちの子に限って・・・」
の楽観論でいくと、確実に誰かしらが大けがをする。
アカウントとパスワードの不備が問題になったが、ここの管理は最重要である。
子ども一人ずつに異なるアカウントを付与し、パスワードは他者に推測できないランダムなものにする。
あくまで端末もアカウントも学校のものであるため、パスワード変更等は行わない。
学校からはアカウントが常に閲覧可能な状態にしておき、保護者にも同様に端末及びアカウント監督の権限と義務を依頼する。
こういった基本的な対応を全くしていない自治体が至るところにあるという。
なぜかというと、各校にICT専門の人員が配置されていないからである。
ICT専門家にとっては、恐らくこんなことは常識であり、放置することはあり得ない。
一方で、ICT専門家でも何でもない多忙極まる教員にとっては、アカウントとパスの作成などは完全に未知の作業である。
つまりは、人材不足の引き起こす不幸と不備ともいえる。
(Wi-Fi環境不備の問題と根幹は同じである。要は予算の問題である。)
アカウントとパスが「ザル」な状態の自治体は「子どもはアカウントを乗っ取って遊ぶだろう」という前提がない。
「夜中に勝手に使ってひどいいじめをするだろう」という前提があれば、使用の管理をするはずである。
先日の事件を他山の石として、何とかして即刻正すべきである。
「子どもに対してそんなひどい見方を」などときれいごとを言わない。
世間の大人を見ればわかる。
なぜあれほど汚い記事やニュースが歓迎されるのか。
子どもは大人を見て育つのだし、いずれ大人になる存在である。
一定数そのような使い方をする子どもがいて当然とみなすのが、自然で合理的な考え方である。
道徳的なきれいごとで見てはいけない。
子どもだって悪いこともするし、とんでもないひどいことも言うのである。
端末使用に限った話ではなく、これまで何十年と学校で現実に起きてきたことである。
更に、物理的な面での過失による危険や故障を起こすことも制度設計に入れておく。
落下。
水没。
画面割れ。
タッチペン紛失。
1校の子ども何百人に端末を渡すなら、どれも十分にあり得ることであり、起きない方が不自然である。
「事故は起きない」という前提をもつこと自体、小学校の算数レベルでの誤った認識である。
(500人いる学校なら、発生率たった1%と見積もっても5人に起きる。)
自校の学校の端末使用について見直してみる。
教員なら勤務校、保護者なら子どもの端末である。
やはり安全面について管理が不適切だと思われるなら、早めに言うべきである。
事故が起きてからでは遅い。
もう、放っておけば危ないというのは、わかりきっていることなのである。
せっかくのこの流れを止めないためにも、安全面の保障については特に気を配っていきたい。
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