感染症対策として、8月末から1か月間、完全オンラインのみで進めていった。
全国には、ほぼ全くオンラインでやったことのない学校(またはやれない学校)もあるときく。
そこで、せっかく先行実践としてやらせてもらっている中でわかってきたことを、メモもかねてシェアしてみる。
ちなみに基本は「同期型(ライブ双方向型)」の授業である。
1 「聞く」について
実際の教室だと「話を聞く」ということの大切さをまず指導する。
必要なことを伝達できないからである。
話を聞きたいと思っている子どもが聞けないからである。
オンライン上では、この指導が基本的に必要とされない。
スイッチ一つで音声のオンオフができてしまうからである。
教える側による一括操作もできる。
誰か一人が喋っている間、基本的に他の音は入らない。
本質的ではないが、いわゆる騒乱状態というのは起きないと思われる。
これは一方で、かなり個人裁量に任されるということでもある。
仮に本人が「聞いていない」という状態でも放置になる。
何をしていても周囲に迷惑をかけていないので、問題にならないという面もある。
総じて「一方的に喋って進める」という一斉講義型指導に関してはやりやすい形になる。
だからこそ、一方的にならないような配慮が通常以上に必要とされる。
2 「話す」について
35人のような多人数の場合、マイクを常時オンにしておくとお、誰かしらの生活音を拾ってしまう。
そこでマイクのオンとオフという操作が基本的に必要になる。
よって実際に教室にいる場合と、会話のテンポは全く変わる。
「冗談を言って反応を見る」というような通常ではありふれたことが結構難しい。
いっぺんに複数が喋るということがない(できない)ので、「挙手機能」が役立つ。
これは逆に言うと、実際の教室と同じで、挙手→指名制のみに陥りやすい。
こちら側が意図的に指名していかないと、一部の子どもの発言のみで進んでしまいがちになる。
一斉に話せない分、チャット機能は有用である。
個々の意見を全員に一斉共有できる。
ここをどう使うかが結構大切であると感じる。
3 交流について
隣の人と気軽にちょっとおしゃべりや相談、というのにひと手間かかる。
一つしゃべると全員に丸聞こえになるためである。
「ブレイクアウトルーム」のように各部屋を割り振って、その中に移動してから各々が話すという形になる。
一度各部屋に入ったら、今度は全員を呼び戻す必要が出る。
発問1つ、あるいは1テーマを与えたら、しばらく時間をとる必要が出る。
また、各部屋の中の様子がわからないため、一つずつ回ることになる。
班を回る感覚に似てはいるが、移動の時間がやたらかかるのと「見に来てます的存在感」の大きさが違う。
「密室」に近くなり、何があるのか把握しづらい。
逆に言えば、外からの目を気にせずにお互いが話しやすいとも言える。
これもやはり、使い方次第である。
4 画面と視力について
オンライン授業は、とにかく目が疲れるというのがネックである。
子どもの視力低下をはじめ画面の見すぎによる弊害が問題に上げられており、対策が必要である。
なるべく画面から目を離す機会を多く設ける必要が出る。
完全デジタル教科書になると、ここが一つ心配のポイントになる。
紙の教科書やテキストが別に手元にあるなら、画面から目を離してそちらを見て作業することができる。
デジタル教科書で更にそこに書きこむ形だと、画面を見続けることになる。
紙の教科書に軍配があがるとしたら、この点である。
また教科書が映っている端末と授業で繋がっている端末が一緒だと、画面の切り替え等で不都合が起きそうである。
ただし、このデジタル教科書については実際やっていないので、調べればよい解決方法がありそうである。
総じて、画面操作も含めて教える側の主導権が強くなりがちである。
特にスライドを使って進める場合は、意識しないと伝達型の講義になりやすい。
いかに学び手自身の作業に返せるかというのが、画面から目を離すためのポイントになりそうである。
5 同期型とオンデマンド型について
両者にメリットとデメリットがある。
同期型の良さの一つは、確実にその時その場でやれることである。
開始時刻も時間も決まっているので、そこで学ばざるを得なくなる。
「他律的自律」である。
登校しないで済むところを除けば、通常の学校と同じである。
一方でオンデマンド型や課題は、自分でやる時刻、取り組む時間を決められる。
求められるのは、自律の力である。
毎月送られてくる通信教材をきちんと計画的に進められる子どもには、この形でも割と問題ない。
しかし、それが難しいという子どもの場合、日毎に課題が積み重なるという地獄が待っている。
(自分の夏休みの宿題への取り組み方がどうだったか、通信教材をできる人かどうかを考えれば、大体わかる。)
両方に、メリットとデメリットがあり、バランスが大切である。
オンラインのみであれば、やはり同期型が多くないと小学生にはきついと感じる。
昨年度の春、休校中に全国で出された大量のプリント学習が批判された。
オンデマンド型や課題中心だと、あれと同じことが起きることは必至である。
やってみての実感だが、「ハイブリッド型」といわれるものが一番難しい。
(目の前に子どもがいて授業をしつつ、画面の奥にも子どもたちがいる状態。)
リアルと画面、どちらに焦点を合わせるかで、全く授業が異なるためである。
現実的なのは、リアルに焦点を合わせて授業をし、カメラの側には基本「視聴」してもらう形である。
勤務校では、感染症対策で登校を控えた子どもがこれで授業に参加したり、保護者会をこれでやったりしたこともある。
まだまだ試行錯誤だが、オンラインは個々の交流には便利な面がかなり多い。
今後、感染症対策とは全く別に、通常時に使うにあたっても色々な可能性がありそうである。
まずは今、やれることをやっていきたい。
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