2021年2月7日日曜日

報われない真面目

 前号で、当事者意識をもつことの大切さを書いた。

大切さを説いたので、そのアンチ面も示す。

正負の法則で、真逆の価値も見方もある。


昨年末、クリスマス前の時期に出た次のニュースである。


「公立校教員の精神疾患休職が過去最多 業務の増加、複雑化が一因か」産経ニュース


「先生の仕事を楽しくする」というのは、自分のメルマガや著書のテーマの柱である。

いかにして多忙極まる学校の先生の負担感を減らしつつ、いきいきと元気に働けるようになるか。

教育実習生を教える立場からも、ここは重要テーマである。

研究論文もここをテーマにしており、長らくの関心事の中心である。


しかしながら、実情は相当しんどい。

今更ここで言うまでもなく、ご存知の通り、真面目な人が倒れる。

「熱心な先生」「授業が面白い先生」「評判の先生」が、ある日パタリと倒れることも少なくない。

これは言い換えれば、当事者意識の強い人でもある。

自分には関係ないと思えて適当にやっていれば、少なくとも精神的に追い込まれることはないからである。


「努力は報われる」という言葉があるが、これは惜しい。

「報われる努力がある」という方が正確である。

これは同時に「報われない努力もある」ということを示している。


全部真面目にやっていると、結果的には、だめなのである。

ニュースのタイトルにもある「業務の増加、複雑化」。

これは数多くの現場の事実とデータが示す紛れもない真実である。

全てに当事者意識をもってやっていたら、倒れること必至である。


それぞれ事情があるので一概には言えないが、それを兎にも角にも一概に表現するのがこちらの使命である。


一つ間違いなく言えることは、悩んでいるのは、既に一生懸命真面目にやっている証拠である。

そして不都合な真実を述べると、学校現場というのは、真面目な人の真面目さが報われる世界ではない。

(憶測でしかないが、政治の世界などもそうなのかもしれない。他のあらゆる仕事がそうかもしれない。)


真面目とは別の要素の「うまさ」「要領」「根回し」が確実に必要になる世界である。

どんなに一生懸命やろうが「もっとうまくやれ」の世界である。

直球で真面目で純真で責任感が強い人ほど、どこかで干されて吊し上げられて十字架にかけられる運命にある。


しかしながら、急に性格を変えるなどできない。

それこそ「自分らしく」の多様性の尊重である。

それでは、根が真面目な人は、一体どうすればいいのか。


まず、自分が真面目に頑張っていることを、誰でもなく自分自身が認めてあげることである。

周りがきちんと見ていてくれる、というような不毛な期待は一切しない。

自分自身だけしか見ていないのだから、せめて自分だけは自分の努力やひたむきさを100%認めてあげることである。


真面目な人は、周りがやりたがらない「損」な役回りやしんどいことを、陰で努力し支えていることが多い。

(これも憶測だが、警察官や自衛官の方々の仕事など、これが多いのではないかと思う。)

残念ながら、周りからはその苦労がほとんど見えない。

それどころか「真面目で融通が利かない」「厳しすぎる」と陰で罵られ、嫌われることも少なくない。

当然、これが積もり積もれば、肉体的にも精神的にも追い詰められ、病気になる訳である。


ちなみに学校の場合なら、確実に見てくれている人が、いるにはいる。

子どもたちである。

特に一部の子どもは、苦労している先生のことをとてもよく見て知っており、心の中で応援してくれている。

そこに附随して、その子どもの保護者も心から応援してくれていることが多い。

毎日長時間接する子どもたちには、どの先生が一生懸命に自分たちのことを考えてくれているかを見極める審美眼がある。

ただ子どもは立場上、表立って声を上げて応援できない可能性が高いので、ここは心の拠り所にするにとどめる。


結局、真面目な人は、真面目にやるしかない。

手を抜けとか見逃せ、というのが、本質的に苦手で苦痛なのだから仕方ない。


ただそれも自分で認めた上で、うまさが必要だと感じたら、少し使えばよいし、手抜きしたくなったらその時は手抜きをすればよい。

ご家庭のキッチンでは「簡単♪手抜き料理」は称賛の対象である。

どちらにせよ、他人のために自分が不幸になる必要はない。

誰しも、不幸になるために生まれてきたのではないのである。


私には、真面目な先生にもいい加減な先生(失礼)にも、尊敬する人たちがいる。

どんなタイプの人も、一緒に働く仲間として、学校の先生として、確実に必要な存在である。

だからそのままでいいので、真面目タイプは、とにかく自分を責めないことである。

(基本がいい加減タイプの人には、そのままで大丈夫なので、アドバイスはない。)


ちょっとネガティブに聞こえるかもしれないが

「真面目は報われない」

と一度諦めて、いくつかやめてみること。

「いざとなったら休んでも辞めてもいい」と逃げ場を作ること。

そうすると、馬鹿らしくなって、一回やる気がなくなるとは思う。

しかしその後で、どこが力の入れどころかは、見えてくるかもしれない。


一番大切なことは、自分自身を大事にして、認めてあげることである。

そのためにも、一人でもいいから、無条件に自分を味方をしてくれる人がいないか、よくよく考えてみる。

そんな人が一人でもいたら、それは自分にとって、最高に大切にすべき人である。


当事者意識はプラス面の振れ幅が大きい分、マイナス面の振れ幅も大きいという前提のおさえが必要であると思い、書いた。

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