次の本を読んだ。
2021年本屋大賞の第1位で、どこの書店にも平積みされている本なので、見かけた人も読んだ人もいるかもしれない。
虐待児童、家庭内DV、LGBTQへの無理解といった社会問題を正面から取り上げている。
(そしてこれらの問題は全て根っこが繋がっているということもよくわかる。)
この本は教育関係者、特に小学校の担任は読んでおいて損はないように思う。
文学作品としての良さだけでなく、教育書以上に教育の在り方について考えさせられる本である。
この作品中に、虐待を受けていた主人公を小4で担任した教師への痛烈な批判がある。
自分を救おうという純粋な思いから、保護者に婉曲に「うまく」注意したつもりの担任。
親は注意を受け入れたように見せ、そこからは、学校に見えないように虐待がますますエスカレートしていく。
この親は、娘が担任に相談したのだと信じ込み、二度と絶対に逆らわないように、更なる凄惨な虐待による洗脳を行う。
学校では、きちんとアイロンをかけてもらった制服(実は子ども自身がやっている)を着るようにさせる。
親の対応が良くなったように振舞う主人公。
それを見て「よかったじゃん」
「(お母さんはあなたを)大好きなんだよ」
という担任の顔に
「唾を吐き掛けたくなった」というくだりがある。
学校ではよく「先生に何でも相談していい」という。
しかし、例えばいじめの場合が特に顕著だが、子どもはそれをまず教師には言わない。
頑なに「何でもないです」「大丈夫です」と拒み、否定する。
下手な対応をされると、いじめがより巧妙に、より激化するからである。
これは、対保護者でも同様である。
何か問題があった時に「お母さん(お父さん)には絶対に言わないで!」
と子どもが懇願してくる場合、その家庭では失敗に対し、かなり厳しい「お仕置き」が待っている可能性がある。
学校の教師の中途半端な正義が、子どもをより苦しめることがある。
しかしながら、かと言って見過ごすわけには絶対にいかない。
これは、かなり深く考えるべき事柄である。
また作中に出てくる「いい先生」に対して「育てやすそうな子だけ可愛がっている」と指摘する。
この教師への指摘は、この作中に出てくるあらゆる親に対しても当てはまる。
虐待されている子どもは、生半可なことでは助けられない。
そして、虐待されている子どもは、何がなんでも助けねばならない。
社会全体で、児童虐待への関心をもっと高めていくべきである。
同時に、家庭内DVへの問題への関心も高めることである。
夫婦間等の家庭内DVの鬱憤を、子どもへのDVや育児放棄として晴らしているという負の連鎖があるためである。
このような問題提起のある作品が一般に大ヒットしたということは、社会的意義がある。
児童虐待をなくしていくための取り組みについて、学校現場に働く人間としてはもちろん、書籍等を通じてでも行っていきたい。
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